アルテミス計画は、アメリカ航空宇宙局(NASA)が主導する月面探査プログラムです。アポロ計画以来、およそ半世紀ぶりに人類を月面に送り、月での持続的な活動を目指しています。
アルテミス計画の主な目的は次のとおりです。
- 月面拠点を建設し、月面での長期滞在や開発を進める
- 月面探査の中継基地となる月周回有人拠点「ゲートウェイ」を建設する
- 将来の有人火星探査を見据えた技術実証を行う
アルテミス計画は、NASAと民間企業、JAXA(宇宙航空研究開発機構)、ESA(欧州宇宙機関)、CSA(カナダ宇宙庁)などが参加する国際協力体制のもとで進められています。日本は、2020年10月に「アルテミス合意」に署名しており、月周回有人拠点「ゲートウェイ」のモジュールに居住環境を整える技術や物資補給などの協力を行っています。
アルテミス計画の名称は、ギリシャ神話の神「アポロン(アポロ)」と、その双子の兄妹である月の女神「アルテミス」に由来しています。
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アルテミス計画の目的
アルテミス計画の大きな目的の1つに、月の南極付近に氷の状態で豊富に存在すると見込まれている水資源や、重要鉱物の開発がある。月面の水を水素と酸素に電気分解すれば、月面で燃料と酸素を自給でき、重力の大きい地球からロケットを打ち上げて燃料や物資を運搬するよりも効率的に火星を目指すことができる。
月に存在するアルミニウム、チタン、鉄などは基地を築く材料にもなる。さらに核融合を起こす「ヘリウム3」も豊富にあると見られ、その量は地球上で使用する現在のエネルギー資源の数千年分に相当するとの見方もある。
また、同計画には日本のほか、欧州諸国、豪州、インド、韓国、UAEなど34カ国も参加する。1960〜70年代の米国のアポロ計画では、合計12人が月面着陸を果たしたが、全て米国の白人男性だった。アルテミス計画では、女性やパートナー国からの宇宙飛行士にも活躍の機会を提供する理念を掲げている。
日本政府はアルテミス計画において、2020年代後半に米国に次ぐ2カ国目の有人月面着陸を果たす目標を掲げている。日本人が少なくとも2人、月面活動に参加する方向で米国政府と最終調整している。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2023年12月、アルテミス計画の有人探査を見据えた宇宙飛行士候補者として、2人を新たに選んだ。日本の貢献に対する期待が高まっており、今後の活躍を期待したい。
各ミッションのスケジュール(当初の計画より遅延も)
アルテミス計画は月着陸船の開発難航などが理由で、当初の計画よりも遅延している。現時点で発表されているミッション概要とタイムラインは次の通り。
アルテミスⅠ:無人の月周回試験飛行(2022年11月~12月に成功)
SLS(Space Launch System)ロケットと宇宙船Orion(オリオン)の試験飛行を目的として2022年11月〜12月に実施された。Orionは月面まで約100kmまで近づき、月周回軌道を飛行した後、地球に帰還した。
アルテミスⅡ:有人の月周回試験飛行(2025年9月予定)
アルテミス計画初の有人ミッションで、4人の米国宇宙飛行士が宇宙船オリオンに乗り込み、月周回軌道を飛行して地球に帰還する。月周回軌道では様々な実験と試験を計画している。
アルテミスⅢ:女性初の月面着陸(2026年9月予定)
アポロ計画以来、半世紀ぶりとなる有人月面着陸ミッションだ。4人の米国人飛行士が宇宙船オリオンに乗り込み、SLSロケットで打ち上げられる。
その後、月周回軌道で事前に待機している月着陸船と合流。2人の宇宙飛行士(女性、非白人)が月着陸船に乗り換えて、月南極付近に着陸する。そして、氷などの資源を探査し、月着陸船に戻って月周回軌道上で待機している宇宙船オリオンと再度合流。地球に帰還する。
アルテミスⅣ:ゲートウェイ組立拡充(2028年予定)
月を周回する宇宙ステーション「ゲートウェイ」建設のためのミッションだ。米国以外の宇宙飛行士を含む4人が宇宙船オリオンに乗り、SLSロケットで月周回の新宇宙ステーション「ゲートウェイ」に欧州および日本製の国際居住棟「I-Hab」を運びドッキングさせる。
4人のうち2人は、ゲートウェイで月着陸船に乗り換えて月面に着陸し、資源探査や科学調査等を行う。その後、月着陸船で月面からゲートウェイに戻る。その後、4人ともゲートウェイから宇宙船オリオンに乗り込み、地球に帰還する。
アルテミスⅤ:月面探査車による月面活動拡充(2029年予定)
4人の飛行士が宇宙船オリオンに乗り、SLSロケットで欧州製の燃料補給・通信モジュール(ESPRIT)とカナダ製ロボットシステム(Canadarm3)をゲートウェイに運びドッキングさせる。地球からは月面探査車(LTV)も運ぶ。
このうち2人の宇宙飛行士は、ゲートウェイで月着陸船に乗り換えて月面に着陸し、資源探査、科学調査、月面基地建設等の準備を行う。その後、ゲートウェイに戻り、4人の宇宙飛行士は宇宙船オリオンで地球に帰還する。また、翌年以降にミッションⅥ、Ⅶが行われ、月面基地の建設が予定されている。
日本の技術と産業界への期待
日本はアルテミス計画の主要パートナーとして、数々の重要プロジェクトに参加している。
JAXAは日本の自動車メーカーと協力して、アルテミス計画で飛行士が月面を探査するための有人与圧ローバーの提供を予定している。さらに日本の建設会社などと協力し、AI、ロボット技術、3Dプリンティングなどの先進技術を活用し、月面基地の建設や運用の効率化を目指している。
さらに、月面基地とは別に、月面や他の惑星探査に必要な高精度着陸技術を小型無人探査機で実証する「SLIM」計画を進め、2024年1月20日には旧ソ連、米国、中国、インドに次ぐ 世界5カ国目の月面着陸を果たした。
目標地点からの誤差が100m以内という 世界初の「ピンポイント着陸」に日本が成功し、SLIMが着陸直前に放出した2台の小型ロボットが、 月面にたたずむSLIMの画像を地球に送信できたことは、アルテミス計画への大きな貢献につながり、今後の資源探査で日本の強みともなる。このほか、日本の宇宙スタートアップ企業も、着陸船と探査ローバーの月面着陸に向けて準備を進めている。
また、ゲートウェイ構想における日本の役割として、JAXAは国際宇宙ステーション(ISS)へ物資を運ぶ補給機「こうのとり」で培った技術を活用した参画を準備している。具体的には、居住機能及び補給での貢献を念頭に、ミニ居住棟(HALO)への機器の提供、欧州宇宙機関(ESA)やNASAとの連携による国際居住棟(I-HAB)のサブシステム(環境制御・生命維持装置)での参画などを目指し、日系企業と連携して開発している。